営業の活動量といえば、多くのビジネスでは、訪問件数や商談件数となってきます。案件型の営業では手持ちの案件数かもしれません。営業活動では、さまざまな活動指標が考えられますが、その活動量を目標にして、結果を振り返る、あるいは活動量の変化を知ることから、営業のPDCAを回してみることをオススメします。
訪問件数では、かつて実際にあったあるエピソードを思い出します。
ある会社の天皇ともいわれるほど絶対権力を握っていた創業家のトップの不祥事が明るみにでて、経営から追放されることになったのですが、それをきっかけに、それまでは誰も口にできなかった社内の不満が明るみにでたのです。そのトップは営業に『毎月60回』の顧客訪問を行い、さらに逐一上司への報告を行うことを求めつづけていたそうです。
しかも当初は訪問計画を作成するように言われていたのが、やがて、計画をつくるのに時間をかけすぎるなと命じられ、やがて訪問計画の中味を吟味することもなく、ただただ『毎月60回』がひとり歩きしていったといいます。
しかし、その会社は、限られた既存顧客へのルートセールスであったために、ノルマ通りに訪問件数をこなそうとすると、同じ顧客に月に4回、5回とリピートして訪問することになり、「また来たのか」と嫌がられるようになってしまいました。目新しい商談話もないままに得意先がしらけるばかりで、会話も弾まなくなってしまったそうです。
さらに、『9時半から16時半までは事務所に帰ってくるな』、『打ち合わせは17時以降にしろ』と役員から命じられ、サービス残業が常態化していたといいます。
このエピソードを営業のPDCAという視点で見れば、『毎月60回』の訪問件数を目標とした事自体に問題があったわけではありません。『毎月60回』の訪問件数は、一般的には、決して無理な目標とはいえません。
問題は『毎月60回』がお題目となってしまい、会社そのもの、また営業部門が思考停止に陥ってしまったことです。活動の結果を振り返らないで、ただただ『毎月60回』を守らせようとしたために、営業現場で起こっていた問題から目を逸らしてしまったのです。
それは、とりもなおさず、より成果の出る営業活動にむけた改善や、改革のチャンスを自ら放棄してしまう結果となってしまいましした。
しかし重要な事は、実際に『毎月60回』の訪問件数を実行しなければ、それがほんとうに目標として適切であったのかもわからず、あるいは顧客不足などの問題なども明らかにはならなかったことです。
普通に考えれば、既存顧客が不足していたのなら、既存顧客への訪問件数を抑え、新規顧客の開拓に注力するとか、あるいは営業の業務や営業の活動の範囲を広げるとか、さまざまなアイデアがあったはずです。もしかすると、そもそも営業人員が過剰だったのかもしれません。
PDCAをまわす前提として、結果としての売上だけでなく、営業活動そのものの目標数値をもつことが重要です。しかし活動そのものに焦点を置くにしても、さまざまな目標数値があります。
しかし、そのもっとも基本となるのが活動量です。実際に顧客とあわなければ、生きた商談も、顧客から生きた情報を得ることもできません。
活動量というもっとも基本になる指標は、訪問件数や商談件数、あるいは営業のステップを踏んでいく案件型の営業の場合は、手持ち案件数が活動量とみなすこともあります。
活動量をモニタリングすることで、個々の営業メンバー、またチームのコンディションもわかってきます。活動量になにかの変化があれば、なにかの問題が起こっている可能性が高いのです。その原因を探れば、問題が根深くならないうちに、対策を打つことも可能になってきます。