どの顧客、どの商談を優先するかは、まさに営業戦略そのものです。また営業の知恵の使いどころです。訪問しやすい顧客、相性の良い顧客ばかり回って、肝心の大切な顧客が疎かになっているといった不満もよく耳に入ってきます。
さて、どの顧客、またどの商談にどれぐらい活動を配分するかは、なんらかの考え方や営業方針にもとづいて決められているはずです。しかし考え方や営業方針だけでは、実際の営業活動は、そのとおりにはならないという営業マネージャーの悩みもあります。
大切なのは、どうすれば、活動配分の考え方や営業方針を、実際の営業活動に落としこんでいくかになってきます。
そのためには、活動配分の目標、また基準を数字で持つことです。目標数値、また基準があれば、その基準に沿った顧客や商談の重要度によって活動配分を決められるばかりか、実際にそれにそった活動が実行できたかどうかを、ひとりひとりが、またチームで振り返り、活動配分を修正していけます。
さらに、活動配分の目標数値、また基準を決定していくことを通して、逆にに活動配分の考え方や営業方針の共有も促されます。
とくに昨今のように変化の激しい時代には、目標数値や基準を持っているほうが、臨機応変に活動をシフトさせ、営業の機動力を生み出すことが可能になってきます。
では、どのような基準があるのでしょうか。顧客への活動配分の8つの基準をご紹介してみましょう。ほんとうに多くの切り口による活動配分があります。
既存顧客と新規顧客開拓への活動比率
まずは、現に取引が継続している既存顧客と見込み客へのアプローチの配分です。よく、新規顧客の獲得に要する費用は、既存顧客を満足させる費用の5倍にのぼると言われます。見込み客発見のために電話でコンタクトするコールド・コールでアポがとれる確率がいかに低いかは多くの営業の方の実感としてあるはずです。
しかし、既存顧客だけに集中するほうが、目先の効率性はいいとしても、それでは顧客が先細りになってしまうばかりか、長期的に見れば、顧客の新規開拓や新陳代謝がなければ、ビジネスの成長はおぼつかなくなってしまいます。
既存顧客と新規顧客開拓への活動をどうバランスさせるかは永遠のテーマかもしれませんが、今日では、より確率の高い顧客(リード)を発見するための工夫に多くの企業が取り組み始めています。
顧客の重要度に応じた活動比率
もちろん最終的には、営業にとっては、一社一社の顧客、ひとりひとりの顧客が市場そのものであり、どの顧客とコンタクトするのかを決めなければ行動できません。
そのためには、顧客をなんらかの基準で分類してグループ化を行います。そのグループのひとつひとつが顧客セグメントといわれるものです。
顧客をセグメント化し、重要度をランク付けしている会社は多いと思います。当然、顧客セグメントの重要度、あるいは攻略の重点度にそって、訪問頻度を多くするか、抑えるかの判断もなされます。
しかし、問題はどの顧客セグメントへの営業活動を重視するのかです。そこにはさまざまな考え方や基準があります。実際には複数の考え方で、またその時々の方針によって、臨機応変に重要度が決められ、活動配分が行われるというケースが多いのではないでしょうか。
売上高ランキング
多くの場合は売り上げ高で顧客をランク付けを行い、売上ランクにそって訪問頻度を計画し、実行するという考え方です。
利益額ランキング
日本では、実際に採用されることは少ないのですが、売上高だけで顧客を見ると、取引している製品構成やサービス内容で売上高は多くとも利益は低いという場合や、逆に売上高は少なくとも、高付加価値の商品やサービスが売れていれば利益額は大きい場合もあります。
キーマン・ランキング
特に建築資材などの建築関係の業界では、顧客を企業単位から、さらにキーマン単位でランキング分けを行い、その接触頻度を目標としている会社が少なくありません。キーマンによって、手がける物件数、またネットワークの広がりが異なり、より高いランクのキーマンとのコンタクト頻度を高めることが目標となってきます。
商品やサービス、または顧客ニーズ
複数の商品やサービスを扱っていると、用途や顧客ニーズによって、顧客分類を行うことができます。部門単位で担当顧客が分かれていなければ、どの顧客セグメントにどれだけ活動を配分するかを決めるアプローチ方法です。
潜在購買力と取引シェア
ライバルとの競合関係を重視した活動配分です。潜在購買力はいわば顧客の財布の大きさです。その潜在購買力とその顧客でどれだけ取引シェアがあるのかの2つの軸で顧客をセグメントし、目標を定めていく方法です。
顧客セグメント別の営業活動管理 | SFAで何が出来る?何が変わる? そして活用のヒント|アクションコックピット
その他の指標による活動比率
案件ステータス(進捗)
ニーズ探索・提案・見積もり・成約などの進捗管理が可能なビジネスでは、案件の進捗管理を行なっている会社が多く見られます。もっと平たくいえば、種まきの状態の案件数、仕込みの状態の案件数、刈り取りをはかっている案件数の手持ち状態で、活動を配分するという考え方です。
仕込みや刈り取り状態の案件しかなければ、やがて手持ち案件が枯渇してしまうために、種まきのための活動が欠かせません。経験値で目標を設定する、あるいは後に触れる成功率から逆算して目標を設定する方法があります。
【案件管理】刈り取るだけでなく、きちんと畑を耕していますか | SFAで何が出来る?何が変わる? そして活用のヒント|アクションコックピット
プロモーション、または活動テーマ
新製品や新サービスの導入、またキャンペーン実施時には、営業活動をそれらに集中化させ、機動力を発揮することがよく行われます。
顧客をどのようにセグメントするのか、また何を指標にすれば、自社の営業活動にフィットするのかは、ビジネスの特徴や、また営業スタイル、抱えている課題によっても変わってきます。
しかしこれだけは言えます。PDCAを効果的に回すためには、まずは取り組みやすい基準をもつことから始めることです。継続は力といいますが、ひとつの尺度で回していけば、次のより高度な尺度にとりくむことも容易になってくるからです。
いずれにしても、こういった目標管理でPDCAを回そうとすると自動的に集計してくれるSFAは必須のツールになってきます。エクセル管理には限界があり、また表を作成する無駄な仕事をつくることになってしまいます。