連載特集:
営業のPDCAとは

2014年7月24日[連載特集:営業のPDCA]

PDCAは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)のサイクルをまわすことだということをご存知の方は多いと思います。Check(評価)を入念に行う重要性を強調してStudy(研究)としてPDSAとも言われています。

PDCAサイクル

PDCAという手法が日本で浸透したのは、決して最近のことではありません。かつて日本では、QC活動やそれを全社的に広げたTQC活動などの品質管理が盛んでした。企業がこぞって品質管理への取り組みを競い合っていた時期もありました。

その品質管理活動の主導的なリーダーであったのがデミング博士で、デミング博士は、「統計的品質管理の父」ともいわれるシューハート教授とともにPDCAを提唱した人に他なりません。優秀な活動を行なった企業には、毎年デミング賞が授与されたものです。こういったTQCへの取り組みのブームはバブル期が頂点でした。

ちょうど、それは工業化の時代から、次のステージに産業が移っていく時期にあたっていました。品質競争がすべてではない、改善だけを行なっていても競争上の優位が保てなくなった時期にあたっていたように思います。デミング賞をとるために全社で取り組みを行なった結果、業績が悪化する企業すらでてきたのです。

TQCはその後にTQM(総合的品質管理)と名前や姿を変えました。また経済のグローバル化のなかで、品質管理も国際標準としてのISOに含まれる流れになってきています。

なにが売れるかわからない時代に姿を変え応用されはじめたPDCA

しかしその後、PDCAサイクルをまわすという手法は、おそらくデミング博士たちも想定していなかった目的で活用されはじめます。

典型的には、製造業から、製造と販売を直結する業態に進化したアパレル企業での活用が進みます。アパレル企業では品質もさることながら、それよりも変化が激しくなった売れ筋トレンドをいかに早くつかむかが勝負になってきます。しかも、微妙で、ちょっとしたデザインの違いで売れる売れないがわかれたり、なにが売れるのかの予測が困難になりました。
しかし一方ではIT化が進み、POSシステムでなにが売れ、何が売れないかが刻々とわかるようになってきたのです。

とうぜん、在庫リスクを極力抑え、市場での反応をすばやく捉え、売れるものを迅速に追加生産する業務の流れが重要になってきます。まずは仮の計画、つまる仮説(Plan)に基づいて、実際に商品を売り場に並べてみて(Do)、その結果を振り返り、分析し(Check)、死に筋アイテムをカットし、売れ筋アイテムを追加生産するサイクルが定着します。

アパレル業だけでなく、流通業でも、とくにPB商品の育成で、販売促進策も含めてきめ細かくPDCAサイクルを回す企業が登場してきました。

つまり、なにが売れるかわからない、どのような提案が顧客の心をとらえるのかわからない、市場の不確実性に対する手法としてPDCAが取り入れられるという流れが生まれてきたのです。

営業のPDCAのふたつの目的
もうお分かりだと思いますが、営業部門でPDCAサイクルをまわすということは、ふたつの意味合いを持っています。

ひとつは、営業の業務の改善を目指したものです。

これまでは営業といえば、ノウハウや知識が個人の範囲を超えなかったのですが、IT化が進んできたために、結果が共有できるようになり、なにが効率的な仕事の仕方かを互いに学び合うことができるようになってきました。また、体力と気力だけでは売上が伸びなくなり、結果だけでなく、どうすればより高い目標を達成できるかという売上の達成方法の改善に目が向きます。プロセス管理といわれるものです。

もうひとつは、今日では企業を顧客とする商品やサービス、つまりB2Bのビジネスであれ、消費者を顧客とする商品やサービス、つまりB2Cであっても、顧客のニーズが明確なもの、しかも顧客がそれを自覚している商品やサービスは、コモディティ化し、厳しい価格競争が待っています。それとともに、営業の役割は売ること、販売だけでなく、隠された顧客ニーズをどう発掘してくるかの重要性が高まってきました。
つまり競合の動き、顧客ニーズの変化などの市場の変化をいちはやくとらえたり、さまざまな提案を行なって顧客に働きかけ、隠されたニーズをとらえる行動やアンテナ感度がもとめられるようになってきたのです。

営業PDCAのふたつの目的

営業のPDCAは、業務の効率化、より効率性の高い動き方を探り、営業活動を改善していくサイクルと、不確実性の高くなった顧客変化と市場変化をとらえ、より効果の高い切り口を探って実行していくサイクルのふたつをもっているのです。

つまり、営業のPDCAには営業プロセスを磨き向上させるPDCAと、市場や顧客の変化の好感度なアンテナとなり、機会を見つけ、機動力のある営業展開をはかはるマーケティングを実現するためのPDCAがあるということです。

営業のPDCAは、モノの品質向上を追求してきたかつてのPDCAとは、かなり性格が異なっています。その点を理解し、意識した運営を行うことが、効果的で、ダイナミックな営業のPDCAを回すことにつながってきます。

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